ニュースの論点No.908 あるのに存在しない会社

Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で」20251126日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。

 

Google検索からWebサイトへの訪問が大きく減少しているというニュースが注目を集めています。特に、検索結果の最上部にAIが要約を表示する「AIオーバービュー」が浸透した影響は大きく、ユーザーはこれまでのように複数のページを比較するのではなく、AIの返した内容をそのまま判断材料にするようになりました。

 

私が講師を務めるAI活用セミナーでは、ご自身の事業をAIに検索させるワークを行っています。しかし、自社名を入力しても情報がほとんど出てこない方が少なくありません。出てきたとしても、以前の古い住所や、数年前の求人情報、誤った情報が混じった口コミなど、経営者が意図していない内容ばかりが表示されるケースも見られます。

 

そこで私がお伝えしているのは、「AIで出てきた情報こそ、お客様が知るあなたの会社です」という現実です。お客様は経営者が想像するほど深く調べません。AIが返した情報を見て、「この会社はこういうところなのだろう」と判断します。言い換えれば、その瞬間に表示された断片が、お客様にとっての“事業のすべて”になってしまうのです。

 

こうした説明をすると、多くの方が「情報発信が足りていなかった」と反省されます。一方で、「うちは良いものを作っているから説明しなくても伝わる」「言わなくてもわかる」という考えをお持ちの経営者も少なくありません。

 

確かに、地域で長く愛されてきたお店や、職人の高い技術には、語らずとも伝わる魅力があることは事実です。しかし、AIが情報の入り口となる今、その前提は大きく変わりつつあります。

 

AIは、外に出ている情報しか理解できません。長年の努力も、職人としての誇りも、地域からの厚い信頼も、発信されていなければAIには届きません。その結果、本来は優れた企業であっても、検索結果に情報が出てこないために、比較の土俵にすら上がれないという状況が生まれています。

 

ただし、AIには決して代替できない価値が存在することも確かです。経営者の想い、現場で培われた経験、地域との関わり、長年のお客様との関係性など、人間だからこそ生み出せる価値は確実に残ります。

 

これらはAIに置き換えられるものではありませんし、むしろ中小企業の本質的な強みだといえます。しかし、その価値が“外から見える形”になっていなければ、AIもお客様も判断ができません。価値があるのに伝わらないという、もったいない状況が続いてしまいます。

 

だからこそ、必要な情報は可能な限り発信すべきだと考えています。派手な情報発信をする必要はありません。最低限、自社の事業内容、提供サービスの具体像、実績や写真、経営者の言葉などの一次情報を丁寧に更新していくこと。

 

それだけでもAIの理解は大きく変わり、検索結果に適切な情報が表示されやすくなります。お客様にとっても、安心して選べる材料になります。

 

AIに代替されない価値を持つことは、これからも中小企業にとって重要な柱です。しかし、それだけでは十分ではありません。価値を持つ企業であると同時に、価値が“見える企業”でなければ、市場では選ばれにくくなっていきます。

 

黙っていても良さが伝わる時代から、「発信しなければ存在しない」と判断される時代へと移り変わっています。AIに拾われる情報と、人に伝わる価値。この両方を整えることが、これからの企業に求められる基礎体力になると感じています。

 

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