
「AIを使うと「クソどうでもいい仕事」が増える真因」2025年12月16日、東洋経済オンラインはこう題した記事を掲載しました。
記事によれば、営業やマーケティングの現場では、生成AIによって大量の営業メールや提案文が自動生成され、企業の問い合わせフォームがAIによるスパムで埋め尽くされているそうです。
内容は一見それらしく整っていますが、業種が間違っていたり、根拠のない数字や架空の事例が含まれていたりと、実務では使えないものが大半です。
さらに皮肉なのは、その対策として「AIが書いた営業メールを判定・削除するAI」が開発されている点です。つまり、AIがゴミのような情報を生み出し、別のAIがそれを選別し、人間がその仕組みを構築・管理している。
記事では、これを「AI同士がゴミを投げ合い、人間が後片付けをする構図」と表現していました。効率化のはずが、仕事が増え、疲弊しているというのです。
社内でも同様の現象が起きています。若手社員が「AIで資料作成を効率化しました」と提出してきた資料を、上司が確認すると、存在しないURL、現場にそぐわない専門用語、根拠不明の数値が並んでいる。
結局、上司が一つ一つを検証し、論理を組み直し、ほぼ作り直すことになります。若手は時短できたと満足しますが、組織全体では「AIが生んだ無意味なアウトプットの後始末」という仕事が増えているだけです。
この記事が示しているのは、AIそのものの問題ではありません。問題は、AIを使う人間が思考を放棄したとき、無意味な仕事、いわゆるブルシット・ジョブが爆発的に増えるという現実です。
この話は、中小企業にとって決して他人事ではありません。限られた人員と時間の中で、意味のない仕事が増えれば、効率化どころか現場は簡単に回らなくなります。
生成AIの登場によって、「何を言うか」という情報の中身は、誰でも簡単に量産できるようになりました。正論や一般論、もっともらしい説明は溢れ返り、やがて差がつかなくなります。そうした時代において、相対的に重みを増すのが「誰が言うか」です。
この「誰」とは、肩書や知名度ではありません。突き詰めれば、それは信頼です。
この点、似た言葉である「信用」は過去に向いています。約束を守ってきた実績や取引履歴、数字で示せる成果によって積み上がる評価です。
一方、「信頼」は未来に向いています。「この人なら、次も期待に応えてくれるだろう」「想定外の事態でも逃げずに向き合うだろう」という期待です。約束を守ることが信用だとすれば、期待に応えることが信頼だと言えます。
そして、信頼を成立させる重要な条件が一貫性です。一貫性があるからこそ、人は相手の行動を予測できます。この一貫性は、ミッション、ビジョン、バリューといった価値観に表れます。何のために存在し、どこを目指し、何を大切にするのか。その軸が明確であれば、判断はぶれません。
AIはどこまでいっても手段であり、道具です。薄っぺらい人間がAIを使っても、薄っぺらいアウトプットにしかなりません。仮に信頼できる人と同じ内容が出てきたとしても、その言葉は担保されません。言葉の価値は、「誰がそれを引き受けているか」で決まるからです。
AI時代の競争力は、最新ツールの導入スピードではありません。時間がかかっても価値観に裏打ちされた一貫した判断を積み重ね、すぐには真似できない信頼を築いてきたかどうか。その差が、企業にとってもっとも重要な「強み」になります。

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