ニュースの論点No.980 優秀な人材はこない

「指摘に部下怒り 心身崩し上司退職」2026年8月5日、Yahoo!JAPANニュースはこう題した記事を掲載しました。

部下に仕事上の問題を指摘したところ、部下から強い反発を受け、その後も「管理者として失格」などと言われ続けた上司が、心身の不調をきたして退職したということです。

記事では、職場で許される言動と許されない言動を明確にする必要性が指摘されています。もちろん、暴言や人格否定を許さないという最低限の基準は必要です。しかし、言葉だけを定めても、問題の本質は解決しません。

職場では、何を言ったかだけでなく、誰が言ったかが大きく影響します。同じ指摘でも、日頃から責任を果たし、公平に接している人から言われるのと、自分の仕事を棚に上げている人から言われるのとでは受け止め方が変わります。

一方で、上司との信頼関係が十分でないことを理由に、業務上の指摘を拒否したり、暴言を返したりしてよいわけでもありません。指導の仕方に問題があればそれは別に確認すべきです。本人の仕事上の問題が消えるわけではありません。

中小企業の支援現場にいると、働き方に疑問符がつく人が増えたように感じます。単に知識や経験が足りないという話ではありません。自分ができていないことを認識できない。指摘を受けても行動を改めない。失敗の原因を周囲や環境に求める。そのような人が目立つようになりました。

仮に能力が不足していても、自分の課題を認め、学び、修正できる人であれば成長できます。しかし、自分に問題がある可能性を受け入れられない人は入口にも立てません。会社が丁寧に教えれば、誰でも一定水準まで育つという前提は見直す必要があります。

地方の中小企業では、若い人の絶対数が減っています。能力や意欲の高い人は、大手企業や都市部の企業に採用されやすくなります。その残りの人材を、地域の中小企業が奪い合っているのが現実です。

最近では、外国人労働者の方が、仕事への姿勢や責任感、成長意欲の面で高く評価されることもあります。国籍による能力差ということではありません。日本人であれば、仕事の基本が自然に身についているという前提が、すでに成り立たなくなっているということです。

もちろん、待遇、仕事のやりがい、成長機会、経営者への信頼などを整え、優秀な人材に選ばれる努力は必要です。しかし、それでも優秀な人材が来るとは限らない。

だからこそ、経営者は採用だけで問題を解決しようとしてはいけません。

今いる人員で事業を回せるように、仕事の内容を見直す必要があります。商品やサービスを絞り、採算の低い仕事や過剰な個別対応を減らす。複雑な判断が必要な業務を整理し、誰でも一定水準で処理できる形に変える。必要であれば、現在の人員構成に合わせて、ビジネスモデル自体を変えることも必要です。

AIやDXも、省人化だけが目的ではありません。情報を共有し、判断基準を明確にし、経験者しかできない仕事を減らすことで、能力差がそのまま成果の差にならない仕組みをつくることができます。

人材の質が低下していると感じても、それを嘆くだけでは会社は変わりません。優秀な人材が採れることを前提にするのではなく、限られた人材でも成立する会社をつくることが、これからの経営には求められます。

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